へんてこな国の密君<secretly in queerland>

     


<プロローグ/Welcome to QueerLand>

「なんだよ ここ??!」

あたりを見まわす。

密は見たこともないような部屋の中にいた。
まるでおとぎ話にでもでてきそうな部屋で、あまりのメルヘンさに
くらくらしてしまう。
そして、そこにあるものの全てが小さく、扉も窓もフランス人形サイズだ。
なのに天井は高く室内は広い。

「なんでこんなとこにいるんだ?!」
 
 ちくしょうっ
 わけわかんねぇ。
 いつの間にこんなとこに来たんだ!!?


思い出そうとして記憶をたどるが、頭の中に浮かんだのは
昨日見たテレビ番組とか、今朝の食事の時にちょっかいをかけてきた

都筑のにくたらしい顔とか、くだらないことばかりだった。


 思い出せっ 思い出すんだ自分っっ!!


目をつむって記憶を呼び起こそうと一生懸命頭を悩ませていると、

   ぐにゃり

空間のひずむ音が聞こえた。


「な・・・んだ、これ 」

目を開けると、突如 目の前にさっきはなかったはずの
小さくて丸い、これまたメルヘンチックな机があらわれた。
そして机の上にはチョコクリームで
              “EAT ME”
とかかれた、ハート型のクッキーが皿に入って置かれている。

「“私を食べて”???
 あーもー なんなんだよっ」

 良いよ。
 こうなったら食ってやる!!


密は はむっとクッキーに食らいついた。

体に異変がおこる。
「な、なんだ?!」
しゅるるる〜〜〜〜
音をたてて視界がどんどん低くなっていく。
「なっ なっ なっっ ??!!!」

気がつくと密のサイズは、さっきまで膝下ほどの大きさしかなかった
扉を、ちょうど通れるくらいのくらいになっていた。
「・・・」
言葉がでずに、へなへなとそのまま座り込む。
密の目に扉が映った。


 ・・・こんなとこにいてもしょうがないし、
 こうなったら外へ出てみよう。


ふらふらした足取りで扉の前に行き、ドアノブに手をかけようとすると、

   にゅぁぁぁ〜〜〜〜ん

突然、ドアノブが逃げた。

「なんだ??!」
追いかけても、ドアノブは扉をぐるぐると逃げまどう。
「なんなんだよ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

密が追いかける手を止めると、ドアノブも少し低めの位置で
ぴたっと止まった。


 ん?
 なんだこれ・・・


よく見るとドアノブには1枚の紙がぶらさがっていた。

「“LICK TASTE ME (私を舐めて)”だーーー??!!」

だらだらと汗が流れる。


少し考えた後、ため息をついて密はしゃがみこんだ。


 いつまでも こんなとこにいたくないし。
 しかたない・・・


あきらめてドアノブに舌をのばす。
すると、ドアノブが密にむかって伸びるように棒状に変わった。


 き、気持ちわるっ!!


ぞぞーっとする。
まるでアレみたいだ。

 
 ええーい。ままよ!!


ぱくっとくわえこむ。
いつもやらされているものにくらべたら小さく、
それは口の中に楽々くわえこめた。
とりあえずとくに『ヤル気』もないので てきとうに舐める。


 ん゛ん゛−。 金属みたいなのに、生あたたかくて やわらかくて
 気持ち悪いーーーー。



歯でやわっとドアノブを噛んだ。

『うっっ!!』

 “うっっ!!”???


声のような音がしたとたん、口の中にどろっとしたものが流れ込んできた。
「ぅえっ」
ぺぺっと吐きだす。
するとそれは、思っていたようなものではなく、固形の
小さなミルク色をした鍵だった。


 もー・・・わけわかんねぇ。


ははっと渇いた笑いで鍵を拾う。
ドアノブの下には小さな鍵穴があった。

   かちゃり。
   ギーー

小気味のいい音がして扉が開く。



「ちくしょー。一体これからどーなるんだよー!!」


つぶやいて、ゆっくり密はその扉の外へと歩き出していった。