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| 人間界 国会図書館。 どうしても読みたい本があった。 その本を見つけるのは至難で、もしかしたら 国会図書館になら あるかもしれないと思って 人間界におりた。 そして、思った通り その本はここにあった。 国会図書館は 本を外部に持ち出すことを禁止している。 そのくらい 術でなんとかすれば問題なかったが、 そういうのは あまり好きではない。 持ち出すのが駄目なら ここで読んでしまえばいい。 そう考えて俺は、並んでいる机の 隅のほうに腰をおろした。 探していた本を読めるという嬉しさと、 考えていた以上の その本の面白さに 夢中になって 読みふけってしまい 気づけば もう真夜中。 本当なら とっくに閉館している時間だ。 しかし、どうしてもその本を読み続けたかった俺は 術で姿を見えないようにして 図書館に残って本を読んだ。 明かりが暗いのは たいして気にならなかったけど、 時間のことは全く考えてなかった。 "もう こんな時間か。" まだ、3分の1ほど残っている本を、 惜しく思いながらパタンと閉じて本棚に戻す。 時計の短針は、11の数字を刻んでいた。 夜は嫌いだ。 暗闇は、恐怖を思い出させる。 とくに、月夜は最悪だ。 桜も嫌い。 月。夜。桜。静寂。血液。白。 他人の死に顔。自分の体。それらを支配した男。 考えるんじゃなかった。 閉じ込めた記憶のかけらを、 ぎゅっと、自分の体を抱くことでおさえこむ。 早く帰ろう。 死。 14の体に植え付けられたタナトスの呪い。 笑い声。エクスタシー。恐怖。痛み。悦楽。 気分が悪い。 ふらふらと、全身から血の気のひいた体で外に出る。 このままでは術も使えそうにない。 てきとうに歩いて、貧血状態のわりには 気持ち悪くほてっている 体を、夜風にさらす。 さわさわと、木が、ゆらめいていた。 背景に、月を浮かべて静寂があたりを覆っている。 いつかと 似た、光景。 足元がぐらりと揺れた気がして、側にあった木に手をつく。 ぐっっ。 「・・・・う、うげっ ぇ」 ぐぅっと、こらえきれない異物を吐き出す。 吐物。消化器官?それとも、脳から?? フラストレーション。 沸騰した内臓を溶かして、嘔吐。 口の中、苦い。 嫌な味。 ぐるぐる。 「お。どぅしたんだよー。 かわいこちゃん。」 ふいに、酒くさい息が近づいてきた。 よっぱらいの、二人組み。 答える必要も無いので、無視をする。 「シカトすんなよ〜」 うっとおしい。 「むこ・・う 行け。」 すごみをきかしたつもりが、弱々しいかすれ声で響いた。 「なんだよ。生意気な奴だな。」 なおも、よっぱらいは からんでくる。 酒の臭い。汗の臭い。よけに気分が悪くなる。 ぐるぐるぐるぐる。 回る。 目が回る。 「あっ ちへ 、行け …って、言ってる だろっ ・・・!!」 下から睨み上げる。 その瞬間、二人組みの目の色が変わった。 それは、睨み上られた為の怒り、とか、 怯え、とかいうものではなく、 情欲 その色だった。 「すっげぇ。べっぴんじゃん。」 「犯らしてくんない?」 ニヤニヤとした顔が近づく。 唾を吐いてやりたい気持ちを、必死になっておさえた。 「お・・・れは、男だ。 相 手が、欲しいなら、他を・・・あたれ。」 「別に〜。そんだけ綺麗なら気にしねぇよ〜」 半分、ろれつの回っていない口が、これから 自分たちのすることに 期待しているように 笑いに歪んでいる。 嫌悪感。危惧感。 口が渇く。 吐物の臭い。と、味。 うがいがしたい。 「俺〜。 酒飲むと、みょうに犯りたくなっちゃうんだよね〜」 瞬間、手首をつかまれる。 振り払うが、その力は弱々しい。 「はな っせ っ !!!!」 やっとの思いで男の腕をふりきり、 その瞬間、俺は駆け出した。 「おいおい。うさぎちゃん、逃げちまったよ。」 「追いかけて、剥いで喰っちまおうゼ!!!!」 男たちの、醜悪で、いやらしい笑い声が後ろで 響いた。 |
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