<第2話/おしゃべりな花達ときのこの小屋>

      ハァ ハァ・・・

「・・・たく、城って一体どこなんだよ!!!」

少しでも都筑に追いつけるようにと、ほぼ全力疾走でかけてきたが
どれだけ走ってもみつからない。
足は痛い しスカートはまとわりつくし なれないドロワーズは
内股をこすって痛いし・・・最悪だ。

「もー良い。切れた。」

 だいたい、なんで俺があんな奴のために
 こんなに体力使わなきゃいけねぇんだよ!!!

「馬鹿らしい。歩こ。」

 どーせ一本道だ。このまま歩いてりゃそのうちつくだろ。
 もし道が別れてたら、あいつの気をたどってけば良いんだし。


そう思って てくてくと歩くと、走っていた時よりも
まわりの景色の変わるスピードが早くなった気がした。

 まったく、なんなんだよここはぁ・・・・


*  *  *  *  *




 ・・・なんかこのへん、異様にきのこが多いな。

きょろきょろとあたりを見回す。
目に映るのは、シイタケやエノキのように普通なきのこから、
「これは毒きのこだろ?!」と思えるピンクや紫をしたきのこ。
そのうえ、迷彩柄のきのこなんかまである始末。


「うわ。ヒョウ柄だー・・・」

ものめずらしさによそ見をしながら歩いていると、
  ぽすん
と、ふいに何かに目の前を包まれた。
「う、うわっ」
ぺふっとひっぺがす。


「何これ。花・・・・??」
花柄の着物だった。よく見ると前方に物干し竿らしきものが見える。

 風でとばされたのか・・・
 だったら、また つっといたほうがいいのかな。


「きゃ。嫌やわぁ。いたずらな風やねぇ。」
考えていると、薄紫の着物がよく似合っている清楚な花のような
女が近づいてきた。


「堪忍しておくれやす。濡れへんかったですかぁ?」
「いえ。もうだいぶん乾いてたみたいだったので。」
着物を手渡そうと腕を伸ばすと、女はじぃっと密をのぞきこんだ。
「な・・・なんですか?」
「いやぁ、えらい綺麗な子やなぁと思うて。
 ・・・あぁ!!もしかして。」
女はパチンと手のひらをあわせる。

「うちらのとこに働きにきたん?!」
「え?え??」
話がよく見えなくて目をぱちくりさせているが、
女は嬉しそうに笑って続けた。


「そうよなぁ。こんなところに女の子が一人で来るわけあらへんもんなぁ。」
「こんなところ?女の子???!」
「うちはここの小屋の女郎ですみれって言うんよ。
 あ、ちょっと待っとってな。
 みんなみんなー。
 ちょっと来てー。早ぅ、早うーーー。」
目をシロクロさせてる密を尻目に、女は一見 きのこに見える小屋の中へ
入っていった。

 働く?!女郎??!!女の子??!!!!

頭をぐるぐるさせていると、中から3人の女達がきゃらきゃらと
華やかな笑い声をあげてでてきた。
その中に、さっきのすみれという女もいる。



「おまたせ。
 えとな、この子らはうちの友達…女郎仲間のぼたんとさくらや。
 で、この子が・・・・」
すみれが密の紹介をしようとすると、ぼたんとよばれた
赤い着物を着た女がずいっと密の前にでてきた。

「ここでは前の名前は必要ないやろ?
 ・・・んー。そうや。
 きれいな金色の髪してるし、『小菊』ってのはどうや?」


 ・・・は??!
 ちょ、ちょっと待て!!!俺、働くなんて一言もっっ
 てか、俺・・・・男だし!!!!!


そんな密をほっといて、女達は「ぴったりやねぇ」と微笑みあっている。
「あ、あの、俺・・・・」
男なんですけど!!
と、言おうとした瞬間、さくらと呼ばれた桜の柄の着物を着た
少女に、ついっと指で制された。
「あかんよぉ。そんな可愛いらしい顔して
 俺なんか言うたら〜」
にこにこと笑われる。
「で、でも!!!!」
「ま、とにかくここにおってもしゃーないし、中に入って着替えよか」
「え?!ちょ、ちょっとっ!! 
 わぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」
じたばたとあらがう密を、三人の女達はずるずるとひきずっていった。


「ここでは着物が原則なんよ。
 さ、この服は脱いでなぁ。」
「ちょ、ちょ 待っっっ!!!」
「女同士やし恥かしがることあらへんのにぃ〜」
「だ、だから!!!うわぁっ」
よってたかって女達に脱がされる。
「だから待て・・・って!!!」


「あら・・・?まぁ・・・・。」
かぁぁっと顔が赤くなる。
ドロワーズと靴下のみの姿。
はっきりいって、どこからどう見てもマヌケだ。

「・・・だから・・・」
俺は男なんですってば。
と、言おうとした瞬間

「小菊ちゃん。胸が小さいことくらい、気にせぇへんでええのよ?」
と、すみれはにこりと笑って言った。
「へ??」
「せやせや。そのうち、すみれみたいにぼーんと
 大きい胸になるさかいな。」
「え?え??」
「何言うてるの。
 ぼたんのほうが大きいくせにぃ。」
「ちょ、あ、あの??!!」
「さくら、おっぱいあらへーん。
 小菊ちゃんと一緒やぁ。キャハハーー。」
と言って、すみれたちは「胸の小さい小菊」のフォローをしてくれた。


 え、え、ええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜??!!!!
 なんで??!なんで俺、裸なのに
 女の子と間違われたままなわけ???!!!


「だ、だから俺は!!!!」
 男ですってば!!
もう一度言おうとしたが、「でも・・・」とすみれが口を開いたせいで
またもや言葉がつまってしまった。


「小菊ちゃんが来てくれて、ほんまにうち 嬉しいわぁ。
 このごろ、ハートの女王様のせいで
 めっきり女郎の数がへってしもうてな」
「せや。何人の女の子達が女王の言いつけで・・・」
「いやや!!その先はさくら聞きとうない!!!」
さくらは耳をおさえてぶんぶんと首をふる。
すみれとぼたんはきゅっと、強く口唇をかみしめていた。
 

 ・・・・ ・・・・・ 俺・・・女の人の悲しい顔、苦手だ・・・・


あまりにもしんみりした空気だったので、
密は何も言い出せなくなってしまった。



「さぁ。暗い話は無しや。 お着物着ようなぁ。」
ふりきるようにぼたんはニカっと笑うと、たんすから着物をとりだした。

 「んー。ほんまは素肌にお腰つけるんやけど・・・
 ま、初めのうちはこの上からでええわ。
 お着物、うちのお古やけどかんべんしてな。」

ぼたんはそう言うと、素早い動作で てきぱきと密に着物を着せていく。


あざやかな朱色の着物。に、
「これはうちのお古やけど・・・」
と、すみれが薄紫のおびを巻いた。
「んじゃ、さくらはこれあげるなぁ〜〜」
密の髪に朱色と桜色をねじったような紐が結ばれた。



「さぁ。あとはこれで完成や。」
最後の仕上げに、口唇に淡い色のべにを塗られる。

「いやぁ。ますま可愛らしなったねぇ。」
「ほんまやほんまやぁ。」



「・・・・・・・・・・・。」

たらたらと冷や汗が流れる。

 
 ふ、不覚っっ!!!

 いくら情にほだされたとはいえ・・・・
 どうしよう俺、城に行かなきゃいけないのにっ


「さぁ、着替えもすんだことやし、
 そろそろ若様のとこにこの子を連れて行かなあかんねぇ」
密の肩に、ぽんっと手を置いてすみれがにこりと笑う。
「え?」
「せやな。こんだけベッピンやったら若も喜ぶやろうなぁ」
「あ、あの!!!」
「さくらも行くぅぅ〜〜〜〜〜」
「っっ!!!!
 ・・・・。」
何かを叫ぼうとして、密はふと、口を閉じた。


 そうだ。とりあえずその人のとこに行って、
 誤解を解いてここから去ろう。
 ・・・今すぐここで、誤解を解く方法。
 あることはあるけど・・・・。


「できるわけないよな・・・・」


自分の下腹部を見つめ、誰にも聞かれない声でそう つぶやき、
密はおとなしくすみれ達の後をついて行った。







      今回はHシーン無しです。
     ストーリーの展開上、話が長くなりそうだったので2話と3話にわけました。
     ・・・というよりは、『おしゃべりな花』をだしたかっただけなのですけどね(笑)
     すみれとぼたんとさくらはオリジナルキャラです。
    

   
     

010527(日)