| <第3話/いもむしの悪知恵と赤い着物の憂鬱(1)> |
| 「んもぅ。どこ行かはったんやろ、若様」 すみれが、ぱたぱたと小屋の中を走りまわる。 どうやら『若様』がいないらしい。 密は手に水色のメイド服をしっかりと抱えていた。 いつでもすぐに逃げ出せるためにだ。 メイド服と着物。 どっちを選ぶかって言ったら はっきり言ってどっちも嫌だけど・・・ 機能的に、歩きやすいほうが良いよな。 ポンポンと服をたたいていると、ふいにすみれが小さく叫んだ。 「あ。若様ったら、あんなとこにいてはるわぁ。」 すみれが指をさす。 「・・・また大キノコの上かいな。 若、ほんまにあそこが気に入ってるんやなぁ」 ぼたんは、やれやれとあきれて腕をくんだ。 「若さまぁ〜〜〜〜〜〜〜っ」 と、さくらが叫びながら走っていく。 さくらが走り近づいていった大きなキノコの上、 1人の長い髪の男が背を向けて寝転び 長キセルをふかせていた。 なんか・・・・ 見たことあるような・・・・ ゆっくりと男がこちらに顔をむける。 「お、おまえは っっ ??!!!」 「ん?なんだ。あわてうさぎんとこの坊じゃねぇか。 ・・・えらい、かわいらしい格好してるな。」 その男は、密の記憶の中では 京都で一度だけ剣を交えた事のある男― 織也だった。 「あら? 若様、小菊ちゃんとお知り合いなんですかぁ??」 「小菊??」 「な、なんでもねーよ!!!」 いぶかしげな織也をごまかすように、密はくってかかった。 「ふん。まぁいい。 こいつ置いて仕事に戻りな。」 そう言われ、すみれ達はしぶしぶと言った感じでゆっくりと 背をむけながら、 「小菊ちゃん。お腹へってるんやろ? ご飯、一緒に食べような。」 と微笑み、そう言い残して小屋へ戻って行った。 ・・・気づいてたんだ。 実は、さっきからきゅるきゅると お腹がなりそうになって大変だったのだ。 どうしよう。 さっさと城をめざそうと思ってたのに・・・ なんか・・・・後ろ髪ひかれるって言うか・・・ 密がボーっと3人の背中を見送っていると、 「なんだ坊。 そんなとこにつっ立ってないでこっちへ来い。」 と、声をかけられた。 どうしようかと迷いながら織也のほうを向くと、織也が手に 何かを持っているのが見えた。 「??!! そ、それは?!!」 「ん? ・・・ああ、この扇子か。 なんか知らんがそこで拾った」 パタパタと青い扇子で風をあおる。 たぶん、都筑のだ!! あの馬鹿!!家ん中探しても無いはずだよ。 落っことしてやがったんだ・・・ 「それ、たぶん俺の知り合いのなんだ。 返してもらえないか?」 とりあえず、ひかえめに切り出す。 「・・・そうだな。返してやるから、とりあえずこっちに来い。」 そう言って織也がふぅっと口からキセルの煙をふくと、 それが密の体にからまり、密の体は宙に浮いた。 そのまま織也のもとまで運ばれ、とすん、と 織也の前に降り立つ。 近くで見てみると、やはり扇子は都筑のものらしく、 ローマ字で『ASATO.T』と書いてあった。 このキセルの煙、どーなってんだろ・・・ てか、これで扇子を俺のとこまで 運んできてくれても良かったんじゃ? そう思っている密を、「ふぅん」と織也は見回した。 「な、なんだよ。」 「似合うな、それ。」 「??! 男のくせに こんな格好して、 みっともないとか思ってんだろっっ」 ニヤニヤ笑う織也の視線にカーっと赤くなる。 「それより、扇子 よこせよ!!」 そう言って密が織也の胸ぐらをつかみあげると、 「ま、そうがっつくな坊。」 と言って織也はがじっと何かのキノコをかじって口に含み、 密の鼻をきゅっとつまんだ。 息苦しさに、ぷはっと口をひらく。 それを狙ったように織也は口唇を寄せてきた。 「んっ んん・・・・っっ??!」 唾液とともにキノコの破片を舌の上に置かれる。 「んんんっっ!!!!」 抵抗したが、織也の絶妙な舌使いのせいであっさりと飲み込まされて しまった。 ばっと体を離して口唇をぬぐう。 「何 飲ませやがった!!!!」 ぺぺっと唾をはきだして叫ぶと 「ほら坊。 こするから、べにが はみでっちまったぞ。」 と、ケラケラと織也は笑った。 「うるせーっっ」 扇子を奪おうと手を伸ばした時だった。 「?!!」 ものすごいしびれが体中を走り回った。 なんだ?!?! 体が・・・・からだがしびれて動けねぇっっっ 「き・・・さまぁ !!」 そのまま這いつくばった格好になってしまう。 そんな密を嬉しそうに織也は目を細めた。 「やっぱ、ただで渡すわけにはいかねーよなぁ。」 抗ったせいで着物がくずれ、あらわになってしまった 密の着物の胸元に、いやらしい動きで織也は手をのばした。 |