「ん・・・ 直 江 。  いま・・・何時  ?」
高耶はシーツにくるまりながら聞いた。顔に光が当たっているのを感じる。
もう朝なのだろうか?そう思いながら体をもぞもぞと動かした。
しかし、直江からの返事は返ってこない。
「直江?」
不満そうな声を上げつつ高耶はもう一度その名を呼ぶ。
薄く開けかけた瞳に、急に光が飛び込んできた。
しかし、その光は高耶の思っていた朝の光などではなく、
ペンライトよりか大きいくらいのライトのそれだった。

 目がチカチカする。

下を向き目をこする高耶は、妙な違和感に気が付いた。

 ―においが違う。―

いつもならするはずの、直江のエゴイストのにおいがしない。
「直江?」
香水変えたのか?そう問おうとした瞬間、高耶の目は信じられない人物の姿を
とらえた。

「よう。上杉の。」
男は、白いシャツを乱雑に2、3個だけボタンをとめ、黒い皮のズボンをはいていた。
モノトーンの服装とは対照的に赤い髪が嫌でも目につく。
「信長?!!」

方膝を立て革張りのチェアーに座り、くっくっくと喉を鳴らしながら、信長は
凍りついた高耶をみつめていた。
高耶は、シーツに包まれているものの何も着ていない。

「いつもは牙をむいてばかりの虎が、あの男の前だとこうも無防備とは。
 笑わせるのう。」
立てた膝に鼻をこすりながら信長は鼻で笑った。

貴様!!!!

高耶は念を放とうとした。
しかし、おかしい。
念どころか、充分に体に力が入らない。
「無駄じゃ 無駄じゃ」
信長はまたも喉で笑い、ぎしっと音をたてて椅子から立ち上がった。
高耶のいるベッドに近づく。
「ここはどこだ」
そう言って高耶が睨むと、信長は嬉しそうに目を細めた。
「?なんだ。」
高耶は信長を睨んだまま眉をいぶかしげにひそめた。
瞬間、信長が高耶の後ろ髪をつかんだ。
「っつ・・・」
高耶の頭が後ろにひっぱられ、顎がそるような形になる。
数倍近くなった信長の顔を、さらに強く睨んだ。

フフ・・・。信長が不気味に笑う。
「お主のその目よ。」
「ぁうっ」
信長はさらに高耶の髪を後ろへとひっぱった。
高耶の口から苦痛の声がもれる。
「お主のその目が・・・」
高耶を映す信長の目に、淫猥な光がともった。
「儂の情欲に火をつけるのよ」

そう言い放った信長の口唇が、高耶の口唇を荒々しく奪った。

息も出来ないほど乱暴に口腔内を信長の舌が這いまわる。


「っつ!!」
せつな、信長がはねるように口唇をはなした。
少量の血が、信長の口唇の端ににじむ。高耶は軽く笑い、口の中の信長の血を
つばとともに吐き出した。
「ふふ。子虎の牙に噛まれた…か。」
信長はちろっと舌を出し、自分の口唇についた血を舐めとった。
「もう一度聞く。ここはどこだ。」
信長をにらみすえる。
「浄土じゃ。」
軽く目を閉じ、上機嫌で信長は答える。
「いまいましい キリシタンどもの言う、
 楽園(パライソ)と、いうことかのう」

高耶はぐるっと部屋の中を見回した。

しかし、
見えない。

いくら目をこらしても部屋の輪郭が見えてこないのだ。
まるで、”部屋”など存在していないかのように。
自分と、信長のまわりだけが薄ぼんやりとオレンジ色の光に照らされている。
だが、照らしている電灯も見当たらない。
先程まで信長が座っていたはずの椅子までも、まるで消失したかのように
無くなっていた。
「な・・・なんなんだよ  ここは  !! ?」
視覚に思考がついてこない。
「だから言ったじゃろう?
  楽園 だとっっ」

言った瞬間 信長は、喰らいつくような勢いで高耶を組み伏せ、こう言った。

「お主と、儂だけの・・・な。」


信長の舌なめずりが、暗闇に響いた。

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