散り急ぐ花    <第1話> コノ、汚イ躯。(2)              


            入院カルテ    

患者名 都筑 麻人  年齢23歳  B型
病名  肺結核
現病歴 今年9月、発熱、咳、全身倦怠感などの
    風邪症状の訴えにより受診。
    当病院で処方された薬を飲みつづけるも
    よくならず、検査の結果ツベルクリン反応が
    陽性を示し翌月11月に入院となる。

担当医 邑輝

  

「また、少しやせたみたいだ・・・」
自分の手首を見つめてみた。
入院して以来、一向に良くならない体。
最近、よく眠れない。
頭の奥がずきずきして、吐き気が持続している。
「邑輝とあんなことばっかしてるからかな」
苦く、笑ってみた。
あんなこと、とはSEXのことだ。
いつから邑輝とSEXをしているのか、都筑自身覚えていない。
そのきっかけすら覚えていないのだ。
「”嫌だ”って、ことはないし、もしかしたら俺から誘ったのかもな」
ははは、と、また 笑ってみた。
実際、邑輝とのSEXは体中が性感帯になったのかと思うほど
気持ちが良い。

最中だけは、なぜか体の不調も感じられない。
昨日も、ただ、気持ちが良いだけだった。
 ・・・思い出したら  また 体が熱くなってくる
「熱がでてきたかな?な〜んて。」
そう言って、都筑は自分のものに手をのばした。
昨夜のことを思い出してみる。
”あなたはほんとうにいやらしい人ですね”
邑輝の言葉が頭の中で繰り返される。
「は・・・ は ああ」
左手で先のほうをいじりながら、右手を後ろにまわす。
しかし、すこしためらった後 右の手は中に入らず前にもどされた。
 両の手で適当にしごく。
体は熱いけれど、頭の中は冷たく冷えきっていた。

「・・・・っ」
無理やりの射精
とりあえず、大きく二回 深呼吸。
気持ち悪・・・
本当に口にだしたのかわからないくらい、かすかにつぶやいた
 自分の体が信じられない。
 男なのに、男の体を受け入れて そのうえ喘いでいる。
 突っ込まれて、掻きまわされて、ぐちゅぐちゅに滴らせて…
 初めあった痛みは、今ではそれすらも快楽の一部で・・・
 でも、そのことについては、もう受け入れた・・・というか
 どうでもよくなってしまった。
 邑輝のことも恋人だと思っている。
 だけど・・・
言いようのない虚無感
SEXのあとはいつも、それにおそわれた。
ベッドの中でいくら睦言をささやかれようと、いつも”虚無”はやってくる。


「・・・・・・」
考えるのがめんどくさくなって、窓の外に目をやる。
寒桜が、自分の目にしみこむように 鮮やかに色づいていた。
 綺麗な色だ
綺麗で、きれいで綺麗で綺麗で綺麗で!!!!!!!!!!!!

自分の醜さが、  ひきたつ   気 が  シタ

都筑は急いで窓際にかけよる。
           見たくない。
 自分のことを”醜い”って確信させるものなんて
                       ミタクナイ!!!!

カーテンに手をかける。
だけど、一気に閉めようとする手とは逆に、目はある一点に集中していた。
視覚が、脳に伝わり、カーテンを半分まで閉めたところで
手は脳の命令に従い、カーテンを閉める事を
やめてしまった。

桜がざわついている。
ほほを染めた少女のように、桜がさらにあでやかに色づいた
気が、シタ。
 そして、その、桜の下には少年がいた。
白い着物を着て、都筑のいる窓をながめている。
「誰だろう」
ドキドキする。
金色の髪が、桜の色を映しこんでゆらゆら揺れている。
着物の色に、まけないくらい白い肌。
そして、その、白い腕が 都筑にむかってさしのべられた。

       行かなくちゃ!!
そう、思う前に、体はもう 走り出していた。
       早く、あの子のそばにっっ
喉が痛い。頭もがんがんする。だけど、だけど!!!!!
               イ カナ     ク  チャ

”都筑さん!!走っちゃダメです!!”
看護婦の叫び声は、聞こえたけれど  耳には入らなかった
                   ・
                   ・
                   ・  
「い・・・ いな い」
もとのとうり、ただ咲いているだけの桜の下には、もう 誰もいない。
体中がきしきし痛む。のどの奥もひゅうひゅうと鳴る。
だけれど、それ以上に悲しみで 胸が痛んだ。
 桜の木に、もたれかかってそのままずるずると座り込む。
「綺麗な子だったな・・・」
落ちてきた、一枚の花びらが 妙に愛しく感じられて口付けをした。
心が、何かに満たされていく気がして都筑は目をつむり、
そのまま眠ってしまった。
   


第1話 <コノ、汚イ躯> 終わり


HELPME.






                                                       001112 (日)