散り急ぐ花    <第2話> 月に舞う桜              



あの日以来、何度も同じ桜の木の下であの少年を
見かけるようになった。
だけど、いつも俺が追いかけていくと桜の下には誰もいず、
ただはらはらと桜の花びらが舞っているだけだった。
少年は昼間しか現れない。
まるで白昼夢のように不確かな夢のような存在。

あの子は一体誰なんだろう?
きれいな子だった・・・
淡い、月の光を織り込んだような絹の髪、
できたての蝋のようなすべらかそうな肌、それをつつむ白い着物、
鮮やかに色ついた唇、はかなげな首すじ、そしてどこか憂いを秘めた瞳・・・

窓から桜までけっこう距離があったにもかかわらず、俺の目は
彼の姿を細かいところまで記憶していた。

もっと近くであの子と話してみたいな・・・
そう思った時、コンコンとドアをノックする音が聞こえ、
「回診の時間です」と、看護婦と邑輝が入ってきた。

看護婦が血圧測定などの一通りのチェックをした後、いつもどうり
「しんどいとかつらいとか、体で変わったことはありませんか?」と尋ねてきた。
いつもならめんどくさくて「はい」とこたえるのだがここ最近の体の不調は
たまに我慢ができなくなるくらいだった。
「あの・・・ちょっと悪いです・・・」
とりあえずひかえめに切り出す。
看護婦は小さく「まあ」っと言って、どんなふうにかと聞いてきた。
「吐き気がするというか・・・体が異様に重くて、頭痛がするんです」
看護婦はふんふんとうなづきながら手元の、患者ごとに記載している
症状チェックのメモにペンをはしらせている。
「どういうときにですか?食事後?それとも寝る前??」
看護婦の問いに「薬を飲んでしばらくしたらです」と言おうとした瞬間、
「ああ君。続きは私が聞くから、次の部屋に行って用意をしておいてくれないか?」
と、邑輝が看護婦に言った。
「でも・・・」とつぶやく看護婦の耳元で「早く診察を終わらせて君と二人きりで
過ごしたいのだが・・・」とささやいていたのを俺は聞き逃さなかった。
ま、こんなやつだってことは知ってるけどね
嫉妬という感情は無く思った。
「失礼します」とうかれた調子の言葉を残して看護婦は部屋から出て行った。

「で、どうしたのですか?」
邑輝が問う。
「この頃、よく眠れないんだ。そのせいか、吐き気がしたり頭痛がしたり・・・。」
ほう。と邑輝がつぶやく
「薬を飲んだら、飲んだときは楽になるんだけど何時間かたったら
よけいにひどい頭痛と吐き気に悩まされるんだ」
「そうですか・・・。」
「だから、薬飲まなくても良いかな?」
邑輝を見ると、何か考えているようだった。
なかなか返事をしない邑輝に焦れた俺は
「あの少年も、薬のせいで見た幻覚だったのかなー・・・」
と、こぼしていた。
ハハハっと笑う俺を、やっと見た邑輝が小さく言った
「少年・・・?」
「そう。金色の髪をした、きれいな男の子だよ」
俺がそう言うと また、邑輝は何かを考えるように俺から視線をはずした。
「知ってるの?」
「いえ。」
にっこりと笑って俺に視線を戻した邑輝は俺の耳元に唇をよせて、言った。
「私が、毎晩のようにあなたに無理をさせているのが原因かもしれませんね」
邑輝の言葉と、耳にかかる吐息のせいで かあっと、赤くなる。
そのまま邑輝は俺の首筋を舐めるように吸い付いた
「 ン あっっ・・・」
俺が甘い声をもらした瞬間、
「センセイ!!準備ができましたー!!」という看護婦の声が響いてきた。
邑輝は俺の首元で軽く苦笑した後、ゆっくり離れていった。
「また今晩来ます」
そう言い残して、村来は部屋を出て行った。

ふう。
ため息をもらして習慣になってしまったように桜の木を窓から見つめる。
一瞬、誰もいないように見える。
しかし、よく目をこらしてみるとやっぱり少年は いた。
そして、いつもどうり俺の部屋を見つめている。
いつもこんな感じだ。だからこそ都筑は少年を幻覚だと考えてしまうのだ。

追いかけるのも疲れたな・・・
都筑はそう思ってベッドの中に体をすべりこませた。
夜になったら邑輝が来る。
邑輝は何か知っているみたいだったしもう少しくわしく問いただしてみよう
そう思いながら、瞳を閉じた。
しかし、眠れるわけはなく都筑はただベッドの中で
ごろごろ転がっているだけだった。


夜・・・
 邑輝のやつ遅いな
時計を見ると針は午前0時を指していた。
邑輝はいつもだいたい22時には来る。
緊急の患者でも入ったのかもしれない。
都筑は桜の木を見ようと思いキシっとベッドを鳴らして立ち上がった。
夜だし・・・あの子、いないよな・・・
カーテンに手をかけて、都筑は小さく笑った。
音をたてないように静かにカーテンを開ける。
「・・・嘘だろ・・・」
桜の木を見つめ、都筑は小さくつぶやいた。
 なんで?
今まで、昼にしか見かけなかった少年の姿がそこにはあった。
 今まで、一度だって夜にいたことなかったじゃないか?!
 それに、それに・・・
 なんで、うずくまってるんだ???

少年は、体を小さくまるめ座り込んでいた。
いつもは焦点のさだまらない瞳で都筑の部屋をみつめているだけだったのに

 気分でも悪いのかもしれない。!!
現実味が無く、まるで人形のように立ちつくしていた少年の今の、
そのうずくまる姿に都筑はなぜかどきどきした。
 今なら・・・
話すことができるかもしれない。そう思った瞬間、都筑はゆっくりと歩き出していた。

院内から出て、桜のある庭に出る。
いつもなら、この時点で少年の姿は景色に溶けてしまったかのように
見えなくなってしまっていた。でも、今日は違う。

桜の木に近づく。少年は桜と向かい合わせに座り込み、何かをしている。
さらに近づく。近づけば近づくほど、どくどくと体中の血液が心地良く高鳴っていく。
ついに少年のすぐ、後ろにたどり着いた。
少年は、その白く細い腕で一生懸命桜の花びらをかき集めていた。

「何・・・してるの?」
高鳴る心臓が口から飛び出そうなのを押さえつつ言った。
少年は、何も言わずただ桜の花びらをかき集める。
「桜・・・てさ、花びらになっても・・・綺麗、だよ ね。」
なんとか振り向いてもらいたくて、話し続ける。
「咲き誇ってる時も綺麗だけどさ、」
少年の手が、ピクっと震えて一瞬止まる
「散る時の・・・
 なんて言うかな・・・はかなげな感じが・・・」
綺麗だよねと、言おうとした瞬間ゆっくりと少年が振り返った。
少年の手の先、集められた花びらの中、
小さな 白い猫が真紅に染まって横たわっていた。
ふいに少年が口を開く
「俺が殺したんだ・・・」



                       ザワザワト、ザワメイテイル。
                 心ガ?ソレトモ、カラダガ?
月が、激しく光を放っている。
妖しく、風に舞う花びらと交あうかのように・・・
心臓の高鳴りと、桜の、誘うように匂う香りが俺を包みこみ、
気がつけば俺は少年を。
犯していた。

「ン、は  あ・・・・」
少年の口から甘い吐息が漏れる。
俺は夢中になって腰を動かしていた。
少年の体の下には猫の死骸
猫から流れた血液が少年の着物にこすれたせいか、
前戯もなく突っ込まれ切れてしまった そこから流れた血液のせいか
少年の着物は紅く汚れていった。
「あ、ああっっ  !!」
少年が小さく叫んで達したのを確認して俺も達した。

「あんた、ひどい人だね・・・」
少年がつぶやく。
乱れた着物をそのままにして少年は元のとうり桜の花びらをかき集める。
猫の死骸は二人の体の重みで、少し歪んでしまっていた。
猫のために一生懸命な姿を見ている都筑は、なぜか言い様の無い嫉妬を感じた。
「ねえ。」
少年に手をのばし、軽く腕をつかむ。
「離せよ。」
冷たく言い放ち、少年は俺の手を振りほどこうと抗った。
「もう一回、犯らせてよ・・・」
いつになく強引な口調。自分自身でもびっくりした。
少年はなおも抗う。
「離、せ  !!!」
後ろから抱きかかえるように少年の体をつかむ。
「さっきはよがってたくせに。」
少年の体がビクンとこわばる。俺は続けた。
「それの上だから感じたの?」
抱きしめたまま俺は、顎で猫の死骸を指した。
「それとも、その猫を殺したせいで興奮してたの??」
少年はゆっくり振り返って俺をみつめた。
吐息がかかるくらい顔が近い。
見ほれるくらい綺麗な顔が、まるで汚いものを見るかのように歪んでいた。
「あんた、さ・・・ ほんとに サイ テ・・・
 ・・・ ?!」
その先を聞きたくなかった俺は、強引に口に吸い付き舌を絡めた。
「ごめんね・・・」
謝った後、もう一度舌をからめる。
「ん・・・は あ   」
初めはもがいていた少年の力がじょじょに抜けていく。
逃げていた舌が、なすがままになってきた。
 これってOKってことかな・・・?
右手を滑らせて太ももをなぞる。
それだけで、少年の体はビクっとふるえた。
そのまま双丘へとなぞっていくと、さっきのなごりの精子と血液が
混ざり合い、つーっと流れて俺の指にからまった。
舌の絡めあいを激しくしながら、太ももをつたうそれを指ですくいとり
ゆっくりと入り口をほぐす。
少年が、ひっっと苦痛の声をもらした。
切れた部分にあったたらしい。
いったん、そこから指を抜く。ほっとしたように少年の肩が揺れた。
絡めた舌もはずす。
少年は、一瞬切なそうに舌をのばしてきたが急に我に返ったように手で口をぬぐった。
俺は、小さく笑って少年の首筋に口付けを落とした。
そのまま舌で胸の突起までなぞっていく。
ちゅっと、乳首に吸い付いた瞬間
「あっ  !!」
と、甘い声がもれる。
少年の顔を見上げると、頬が鮮やかに色づいてたまらなく艶めいていた。
そのまま下へとすべらせていく。
少年のそれはすでに勃起し、先走りがすこし零れだしていた。
口に含む。
「嫌っっ」と小さく叫んで少年は俺の肩をつかんだ。
「何が嫌なの?気持ち良さそうなのに・・・」
俺の言葉で正気をとりもどしたように少年は言った。
「ふざ っけん なよ・・・
  ん・・・・   は、   はな   せ・・・」
俺は、自分から俺を引き離そうとする少年の手を握った。
「嫌だよ。だって、離したら・・・
  また、       どこかに・・・   行っちゃうん   でしょ?  ?」
少年は、あきらめたかのように瞳を閉じ 抵抗する力をゆるめた。
「・・・桜に手をついて立って」
少年の態度に傷ついた俺は 乱暴にそう言った。
少年は、しかたないという表情で素直に俺の言うことにしたがった。
その態度に、今度は少し腹が立った。
無理やり犯ってるのは俺なんだし、傷ついたりとか腹立てたりとか、おかしいけど・・・
「入れて   良い?」
少年を後ろから抱きしめて耳元で問う。
「聞くなよ・・・」
少年は軽く振り向いた顔を戻して言った。
自分のものを少年の入り口にあてる。
少年の体がビクっとふるえた。
「力・・・ぬいててね・・・。
 さっきより、優しくやるから・・・」
バカヤロと、少年がつぶやいた。
紅く染まった少年の耳たぶが妙に愛おしくて、軽く口付けた。
左手を少年の前にまわしてやわやわとしごくと「っあ・・は・・・」と濡れた声がもれた。
そのまま、あてがったものをすすめていく。
「ん・・・くっっ    ふ      は、ああ・・・・   !!!!」
きちゅっと音をたてながら、中に進入していく。
「ん・・・  んん    あ!!」
「はあ・・・・」
なんとか半分くらいまではいった。
「ゆっくり・・・動かすよ?
 大丈夫??きつ・・・く、ない?」
少年の背中に肌をあわせて聞いてみる。
「き   く  な・・・・」
艶めいた声のまま少年が言った。
「   じゃ、 動く  よ   ・・?」
急に腰を動かし、奥まで突き上げた。
「あ!!!!はああ!!!!」
少年の首がそる。
「んっんっんっっ」
抜挿と同じリズムで甘い声がこぼれる。
前も一緒にしごいてやると、腰がかすかに揺れ動いた。
「う・・・っく。あ、    や・・・・や!!!!」
甘い声が、さらに俺の衝動を強く刺激する。
動きを止めたり、わざとゆっくりしたりすると、少年は切なそうに俺を振り返った。
その表情がまた、愛おしくて激しく突きまくると、
少年は 鳴くような声であえいだ。

「ん・・・あああ    も、もう   だ     め・・・」
限界に近づいたのか、俺の手のなかのどくどくと脈うつ少年のものが大きくふるえた。
「い・・きそ  う??」
俺は腰を深めながら言った。
「・・・っふ・・   く  くうっっ」
少年の顔が切なそうにゆがむ。
しごく手と、腰を早める。
「あ!!!あ、あああああああっっ」
「イって」
耳たぶをかじる。
「あ・・・・あああああああああああ!!!!!!!」
く・・・締まる・・・!!!!

絞りだされるような感じの中で俺は達した。


俺達は桜の花びらの上で二人でまどろんでいた。
すぐそばには花びらで作られた猫のお墓がある。
かなり異様な光景だが、俺は言い様の無い幸福感を感じていた。
「・・・俺、部屋に戻らなきゃ」
少年がすっと上半身を持ち上げた。
俺も上半身を持ち上げる。
「う・・・うん。無理させて、ごめん ね」
行かせたくないと思いつつそう言う。
「謝るくらいなら、やんなよな・・・」
その、生意気な言い方さえも愛しくて 俺は笑った。
「な、なんだよ」
「ん。なんでもない」
気持ち悪いやつだなと言って立ち上がった。
あわてて少年の手を握る。
「何?」
まだ何か用かとでも言うように眉をひそめた。
このまま、何も知らないまま別れたくない。
「なんでここに入院してるの?」
「  ・  ・  ・  」
   無言。
「・・・帰る。」
「ちょ、ちょっと待って!!
 あ、あのさ  。部屋番号、教えてもらえないかな?」
「・・・」
また、無言、かな?あきらめかけた瞬間、
「304号室」
と、少年は小さく言った。
「今度、遊びに行ってもいい?」
そう聞いた俺の腕をほどき、少年は背を向けた。
「・・・バイバイ。」
「あっ。ま、待って!!!
 名前、だけ・・・教え て  ?」

「・・・・・・
                        密                  
                                          。」


   桜    が、 風に舞って、月の光を 反射していた。



第2話 <月に舞う桜> 終わり






                                                       010107 (日)