病院☆パラダイス(1)

☆ ☆ ☆

「やあ〜と、終わったあ!!」

一日の実習を終えて 学生控え室でほっと一息つきながら
俺は着替えにとりかかる。

実習とは病院実習のことで、何を隠そう!!
実はこの俺、内田 敦裕は坂川高等学校衛生看護科に通う看護学生なのだ。
 看護学校というとまわりは女の子ばかりで中学時代の
友達にはうらやましがられるけれど、実際にはそんなに良いものじゃない。

一応、俺の他にも男は二人いる。
だけど、女子35人に対して男子3人というのはいないも同然で
扱いもぞんざいになってくる。
その上、女子が多いということは遠慮もなくなるということで、いきなり
「内田君て、童貞でしょ?」と、恥じらいもなく聞いてくる子までいる。


  ま、たしかにそうだけどね・・・


頭のなかでつぶやきながら実習服の白いズボンに手をかけ、ひざまでズボンを
脱ぎかけたその時だった。

「内田く〜ん。」

という声とともに控え室のドアが乱暴にあけられた。


「うわわわわ!!!」
どんがらがらがっしゃーん!!!!
  

 ・・・あいったぁ〜。


急いでズボンをあげようとして、ずりさがったズボンの裾を踏んでしまった。
そして、そのままバランスをくずし バタンキュー。
しかも、ズボンはほとんど脱げてしまって、俺の下着は「ハロー」とでも
言わんばかりに見えてしまっていた。


「おお。緑のチェック♪」
なんて、のんきに言っているのはクラスの女子の綾川 美里。
じつはこの子が、俺に童貞かどうかを聞いてきた子だったりする。

「な、なんだよ!!何か用??」

おもいきりうったお尻が痛い。
だけど、そんなことも言ってられずに、とにかくズボンをはきなおす。

「あ、あのね・・・」
                 

                !?


俺の問いに答えたのは綾川の後ろからでてきた、中原 雪乃だった。
ふわふわの天然カールを耳の横でくくっている。
「で、伝言を伝えようと思って来たの。
いそいで伝えなきゃいけないと思って・・・・
そしたら内田君、着替えてて・・・。 ほんとうにごめんね」

 見られた!!
 中原に見られた!!!!!

「内田・・・君??」
「お〜い。内田く〜ん?」
ショックでボーっとしている僕を中原と綾川がのぞきこむ。

いけないいけない。下着を見られたくらいで動揺するなんて!!
今時、女子高生でもそんな子はめったにいないだろ!!


「伝言って。何?」
できるだけ平静を保って聞く。
「ドクターがよんでる〜。」綾川が答えた。

ドクター?? どの?? そしてなぜ??

考えていると中原がくりくりした目で言った。
「あのね、大森ドクターが実習のことで話したいことがあるから
ちょっと来てほしいって」

 めんどくさ。

「明日じゃダメなのかなあ」
「ダメっしょ。ほらほら〜。早く行きなよ!!
なんてったて、あの 大森ドクターのおよびだよ!!??
私だったら何がなんでも行っちゃうけどな〜」


大森ドクターは、整形外科のドクターで若くてかっこいい。
くやしいけれど背も高い。・・・・俺だってそんなに低くないけどね。
だけど、どちらかというと色白であんまり筋肉のついていない体には
『男らしさ』というものがみじんも無かった。
虚勢をはるように『俺』と言う言葉を使っているけど、
女子に、よく「にあわな〜い」と言われてしまう。

ドクターは、目が悪いらしくて眼鏡をかけているけど、
それすらも『知的な男』を演出する為の小道具になっている。
女子から言わせてみると
「大人っぽくてクールでさわやかでセクシー」
だそうだ。(なんなんだそりゃ)



「それなら・・・。
代わってやるからさ。綾川、行けよ」
にっこり笑って言った俺に、にっこり笑って綾川も言った。
「呼ばれてるのは内田君でしょ?
私は今日は雪乃とデートなんだも〜ん。」
そう言って綾川は後ろから中原をぎゅぅっと抱きしめた。

 何ぃ!!?

「もう。」と言いながら中原が続ける。
「南3の特別指導室で待ってるって。
ドクター、急いでるみたいだったから早く行ったほうがいいと思うよ。
それじゃあ、私達帰るね。着替え中にほんとごめんね。」
「バイバ〜イ」
と、言って疾風のように二人はでていった。


俺は心のそこから綾川がうらやましかった。
俺は、中原 雪乃が好きなのだ。


「ま、デートっていうのはたんなる言葉のあやだろうけどね〜」
 
 でも、さっきの『ぎゅぅ』はうらやましかったな〜
 綾川になりたかったな〜〜〜・・・なんて。



はは、と笑いながら、俺は指導室へと続く階段をかけあがった。



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