ある者にとっては最高の日で、 ある者にとってはさんざんな日。


4月18日。
それは亘理温(おひつじ座)の誕生日である。

と言う訳で、4月17日の夜。
亘理のバースデーパーティーが行われることになった。
参加メンバーは、主役である亘理と、親友(?)である都筑。
そして 都筑にひっぱってこられた密だった。
巽は1週間前から急な出張でハワイに行っている。
他のメンバーもなんだかんだで来られないらしい。


「さあ、坊に都筑!!
 今日はわいの誕生日やー!
 飲んで食って、楽しんでやー!!!」

妖しげな薬の立ち並ぶ研究室の中、亘理の関西弁が響き渡る。
「わーい!」
と ケーキに食らいつく都筑とは逆に、密は目の前にある飲食物に躊躇した。
ゴージャスな どでかいケーキに 様々なご馳走。
飲み物はコーラやウーロン茶などのソフトドリンクから、
焼酎や洋酒まで、色々とそろっている。
全て美味そうなものばかりで、食欲をそそる良い匂いがするが
亘理の研究室にある料理なんて、どんな薬が入っているかわからない。

次々に料理や飲み物を口にする都筑を見ながら、密はためらい続けていた。
(なんか、変な薬とか入ってねぇよな・・・)
どうしても口にすることが出来ない。
お皿の上に料理は一応のせるが、口には運ばない密に都筑は気づいた。

「どうしたの?食べないの、密?美味しいよー、これ!」
都筑が密の口に自分のフォークをよせる。
「わ、ば、バカ!よせ!」
一口大に切ったステーキ肉を密の口に運ぼうとする都筑の手を、
密は反射的に払ってしまった。

「ん?どうしたんや、坊??」
「あ、い、いえ。なんでもっっ」
「んーもー。どうして料理食べないの?密ぁ。」
猫なで声で擦り寄る都筑の顔を手のひらで抑える。
「気持ち悪い声だすな!!!」
「密君ったら ひどい!」
犬のように『きゅぅん』と情けない声をだす都筑を笑いながら
亘理は密を見た。
密の肩が小さくすくむ。

「なんやぁ、坊。薬でも入っとると疑ってんのか?」
「あっ、そ、そんな・・・」
(そのとおりだけど・・・)心の中でつぶやき、焦る密を見ながら
亘理はまたもや笑った。

「大丈夫やで。今日の料理にはなんも入ってへん。」
そうは言われても食べる気は起きない。
こういうことでは 日ごろから無い信用を、今どうして出せると言うのか。
疑いの目がなかなか晴れない密に苦笑する亘理を横に、
都筑は無理矢理 密の口に一口大のステーキ肉をつっこんだ。

急な食物の侵入に、密のノドは詰まりながらも簡単にそれの嚥下を
許してしまった。

「う、うぇぇ・・・っ」
「大丈夫でしょ?ほら、美味しいー。ねっ☆」
「バっカやろー!!!げほっっ げほ っ!!!」

咽頭につまらせ、涙目になりながらも殴ってくる密のパンチを
ひょいひょいとかわしながら、都筑はまたもやステーキを密の口へと
運ぼうとする。
「やめろって!!!」

「わいって えらい坊に信用無いんやなぁ。」
トホホと亘理が肩を落すのを見て、密は申し訳ない気分になってきた。

「わ、わかりましたよ!!食べます、食べますって!!!
 貸しやがれ!!!!」
なかばヤケになりながら都筑の手からフォークを奪う。

(あ、美味い・・・)

さっきは味わうこともできずに飲み込んでしまったが、よくよく味わって
みると、実に美味い。
半焼きというわけでは無いのに、口の中で肉汁がジューシーにひろがる。
あまり肉系は好きでは無いのに、もっと食べたいと思えるような味だ。
密は気づいたら、次々に肉を口に運び、他の料理にも手を伸ばしていた。
苦手な甘すぎるケーキも、今日はなんだか食べくなって食べる。
食べれば食べるほど どんどん欲しくなっていく。
甘さで舌がだるくなっているのに、次々にケーキを口に運んだ。

様々なケーキを食べ尽くし、少々満腹になったので、最後のデザートに
とりかかろうとしたときだった。
ふいに手を都筑につかまれ、そのまま引き寄せられる。

「なんだよ。」
「チューしよ
「?!っんんー!!!」
都筑は言ったとたん、密の口中に下を挿しいれ、唾液とともに、
トロリとした蜜のようなものをも流し込んだ。
「んんんーっ!!!」
ドンっと、密は急いで都筑を跳ね飛ばし、口腔内の唾液を吐き捨てる。
たぶん、嫌な予感は的中しているであろう。
それでも密は問わずにはいられない。

「バカやろー!!!
 今いったい何・・・を・・・っっ   ? !」

言っている途中、急に口唇がうずきだした。
痛いとか痒いとかでは無い。
妙に、都筑の口唇が欲しいのだ。

「な、何を飲ませ・・・っ」

続きを言おうとしても、視線が都筑の口唇に集中してしまう。
見ないようにと意識すると、挙動不審に視線がうろついてしまった。
そんな密を見ながら都筑と亘理はニヤリと笑うと、
「ほな、わいは行ってくるから、後は二人で楽しみや〜!」
と言って、今回のパーティーの主役である亘理は上機嫌で出て行ってしまった。

「はい、二人っきりになったと言うことでー。」
目をしばたかせながら疑問符と怒りを浮かべた密を都筑は抱き寄せる。
都筑の口唇が近づく。
密の視線と頭の中は、都筑の口唇でいっぱいになってしまった。

しかし、吐息が頬に触れるほど口唇は近いのに、いつまでたっても
望む行為はしてくれない。
神経が途切れそうになった密は、自ら舌を伸ばし都筑の口中に挿し込んだ。
そんな密の舌を楽しそうに都筑が噛むと、密のノドからいやらしい吐息が
もれる。都筑は密の上唇を舐めると、笑いながら言った。

「今日はキスだけで いかしてあげる。」

そう言うとすぐに口唇を戻し、あえぐ密の口腔内を いやらしく動かす舌で
蹂躙しはじめる。

「ん、ふ・・・んん・・・っっ」



  * * *




ひちゃひちゃと唾液が混じる音が響く研究室を後に、
亘理はひそかな野望に燃えていた。

「今回の薬も成功やな。
 これで今夜も楽しいバースデーパーティーになりそうや・・・」

ムフフフ・・・と、亘理の口から 笑い声がもれる。
キラリと眼鏡のフレームを光らせ、亘理は拳を振上げた。

「よーし、待っとれよー巽ーーvvvv
 南国の空の下でア○カンやぁぁ〜〜〜〜っっvvvv

謎なセリフを残したまま、アロハシャツを着た亘理は 麦わら帽子を
押さえつつ、ハワイへの飛行機へと急いだのであった。





  * * *




数十分後





  * * *


「で、どういうことか説明してみろよ都筑・・・。」
「だ、だからぁ・・・」

頭に大きなたんこぶをこさえて、情けない姿の都筑は正座のまま
上目使いで密をみつめて言った。

「だ、だから・・・今回のことは亘理の誕生日プレゼントの
 為にやったんだって・・・」
「はぁ?何それ。意味わかんねー。」
怒りマークを飛ばしまくりながら、密は足で都筑の頭をふんづける。
「密君ったらひどい!!」
「いいから 俺にわかるように話しやがれっっ!!!」
そのまま踵落しでもくりだしそうな密に、情けない声を出しながら
都筑は答えた。

「えっと・・・そのぉ・・・。
 まず、今回の薬はさっきも言ったとおり、
 何かに依存性を起こさせる効果を持った薬でー・・・
 粘膜吸収する薬なんだけど、それを投与しながら
 何か刺激を与えると、その刺激にたいする中毒に陥っちゃうんだ。
 密の場合は、初めは薬が料理に混じってたから
 『食事』って言う刺激にたいして中毒に陥っちゃってたの。
 だから、味もそうだけど、食べること自体がある種の快楽だったでしょ?
 俺は事前に抗体性のある薬を飲んでたから効かなかったけど。

 で、次に薬を飲ませながらキスをしたから・・・」
「その話はもうわかった。」

「ぐぇっっ」
都筑の話の途中で密は冷酷に踵を都筑の頭に落とす。
「亘理さんの誕生日プレゼントのためってのは、一体なんだ」

怒りのオーラを目に見えるほどだしながら威圧する密に
たじろぎながら都筑は続けた。

「あ、あのねっ!!!
 数年前・・・俺と巽がまだパートナーだった頃からの
 亘理との約束でねっ!!
 毎年、亘理の誕生日には巽をプレゼントに捧げるってのが
 俺たちの間の決まりごとなの!!!!」

「はぁ??」

密の眉が、疑問に 歪む。

「初めは亘理が巽に
 『毎年、誕生日の日だけは巽を自分のものにする』
 とかなんとか言ってて、巽は適当にはぐらかしてたみたいだけど
 何年か前に亘理に頼まれてさー、巽って俺の言うことなら
 案外 聞くじゃん?だから呼び出してパーティーに誘ったりして
 そんで亘理に渡したまま帰って・・・あとは、まあ想像どおりに。
 で、その翌年はさすがにすんなり俺の誘いには乗ってこなかったから
 『亘理の薬で死にかけてる』みたいな電話をしたら すぐに飛んできて、
 ・・・あとは、また亘理にわたしてそのまま帰って、
 その後もご想像どおり☆
 で、次の年も まぁ色々と。
 なんか、巽を呼び出すのが毎年楽しくてさ。
 ほんと、すごい色々考えたんだよー。
 なんか癖になっちゃったって感じ? 
 そしたら、昨年は巽ったら長期休暇とっちゃっててさー。
 あ。そうそう!昨年は密の声色を使ってよびだしたんだー。
 『巽のかわりに悪戯されてるー』みたいなことを。
 そしたら巽もとんできてさー。
 あ、そうだ。その時の声色があまりにも密に似てたせいで
 『黒崎君もグルだったんですか?!』とかって
 すごい勢いで巽怒ってたんだよー。
 すぐに俺のしわざってわかったみたいだけどね。
 あ、今 やってみようか?密のモノマ・・・
 
 ぐぇぇぇっっっ!!!!」

ドガァーンっ!と、頭蓋骨が砕け散るような音をたてて
密の踵が都筑の頭部に落とされた。
しゅうしゅうと 都筑の頭から煙がたつ。

「ひ、密きゅん・・・??!」

密の頭からもしゅぅしゅぅと黒い煙がたっていた。

「つぅ〜づぅ〜きぃぃ〜〜〜〜・・・ ・・・」

「ま、待って、密きゅん 待ってっっ!!!!」

「よくも勝手に俺の名前を語りやがったな・・・」

拳を握り締め近寄る密に都筑は後ずさりをしながら息をつめる。

「話を聞いて!!!・・・っ!」
「もう充分 聞いた。
 あとはこの怒りをはらすだけだーーーっっ!!!!」


ドガーーーーーーンンっっ!!!!!!!!!!!!


「ふぎゃーーーーっっっ!!!!」


爆裂音と叫び声の響く実験室から遠く離れたところで
手製の飛行機を操縦しながら
、亘理は頭の中を
極彩色の妄想でいっぱいにしていた。


「この薬で、今夜 巽を わい中毒にしたる・・・。
 ・・・これで、今日から巽はわいにゾッコンや!
うぷぷ。
下の粘膜からたっぷり この薬を吸収させたるからなー!!!
今 行くで巽ーーー!!!!
今日から二人のラブデーの初まりやぁぁ〜〜〜〜vvv
いやっほーい!!!!」




ぶぅーんと 亘理がハートマークを飛行機で描いている頃、
巽は南国の空の下、クシャミを1つしていたそうな。

誰かの幸福の裏には、必ず誰かの不幸があるものです。







めでたしめでたし・・・?






なんだかんだでバースデー話、完了しましたぁ!

って言うか、亘理バースディなのに何故にメインはつーひぃ かよ!みたいな(爆)
こ、こんなはずでは・・・(震)

そしてありがちでごめんなさい。いやん。


0020423(火)