| <第7話/ウェイトレス服といかれ帽子屋の美味しい紅茶(3)> |
| 「ん・・・」 誰かに体を拭かれている。 「だ・・・れ だ??」 けだるさを感じながら目を開けると、 そこには 顔面アップのゾンビ顔があった。 「うわあああああ!!!」 寝ぼけた頭には強烈である。 飛び起きると、そのゾンビは そのまま転がってしまった。 「ワト・・・ソン??」 それは、伯爵のところの執事のはずの ワトソンだった。 よく 目をこらすと、ワトソンの頭にはミッキーマウスのような ネズミの耳がある。 「どうしてこんなところに?」 「ああ。目がさめましたか。」 邑輝が、ティーカップを持って立っている。 「ん?ワトソンとお知りあいですか?」 向かい合っている密とワトソンに、邑輝はそう問い掛けた。 「まあ・・・な。」 密は びっきらぼうに答える。 「彼は優秀な執事でね。 しかし、1日の半分を棺おけで過ごさなければいけないというのが 玉に傷ですね。 ワトソン。もう下がっていいぞ。」 そう言って邑輝は、ワトソンに下がるように命じた。 ワトソンは それに従って下がる。 「・・・。」 密は、無言のまま過ごした。 体は綺麗に拭かれ、白い大きなタオルに包まれている。 「・・・服、早く出せよ。」 いつまでも このままじゃ 城に向かえない。 「どんな服が良いですか? ナース?セーラー??」 からかうように邑輝は次々に変な衣装ばかり口に出す。 「いっそのこと、ヴェロニカとおそろいのドレスなんてどうですか?」 「ふざけんな!!」 お前の人形と一緒の服なんて まっぴらゴメンだ!! と、叫ぼうとした瞬間、ポンっと目の前に服が現れた。 そして それは、亘理の家に置いてきたはずの水色のエプロンドレスと 白いドロワーズだった。 「こ、これは??!」 急いで、エプロンの中をさぐってみると、その中には もとどおり、都筑の白手袋も入っていた。 良かった〜! これで、手袋は届けることができる!! ・・・でも・・・ 「おい。これ以外の服は無いのか?」 体にタオルをまきつけ、邑輝につめよるが 「ありませんよ。」 と、あっさり言われてしまった。 「なんで?!従者の服は どこにやったんだよ!!」 「さぁ。どこでしょう?」 薄く笑いを浮かべて、紅茶を口に運ぶ。 「それよりも、早く お城に行って それを都筑さんに 持っていって あげたら どうです。 ちょうど、時計も直ったようですし。」 「は??!」 『どうぞ。』と言って、懐中時計を渡される。 どうしたものか、咲貴にめちゃくちゃにされた時計は、 もとのとおりの形になっており、その上 秒針も正確に時を刻んでいた。 なんで?! どうして??!!!! 密の頭が、もう今まで何個 現れたか わからない疑問符で いっぱいになる。 「なぁ・・・邑輝。」 「はい?」 そこで、当初の目的を思い出した密は、あきらめてエプロンドレスと ドロワーズを身に付け、自分の疑問を口に出した。 「ここって、一体 何なんだ?」 「『へんてこな国』ですよ。」 「だから、変な国だってことはわかってるんだって。 俺が聞いてるのは、ここは何で、 なんで俺たちがここにいるかってことなんだよ」 密がそう言うと、邑輝はにっこり笑って 「そんなこと 今更 聞くなんて、おかしな人ですね。」 と、紅茶を飲んだ。 はっきり言って、邑輝は紅茶を何杯飲んでいるのかわからない。 よっぽどの紅茶狂なのであろうか。 しかし、今の密にはそんなこと どうでも良かった。 「何 言ってんだよ! 教えろよ!!!」 「んー。めんどくさいから嫌ですよ。 ・・・『資格』も得たことですし、今日の お茶会は これでもう、お開きにしましょう。」 「はぁ?」 言葉の意味がわからず、眉をひそめると 「それでは、また 後ほど。」 と言って、邑輝はパチンと指をならした。 「??!!!」 一気に、まわりの景色が変わっていく。 夜だったのが昼になり、ティーカップもテーブルも邑輝も、 全て跡形も無く消えてしまった。 そして、気が付けば密は さっきの、近衛課長と会った壁のところに 立っていた。 ・・・・・・・。 ただ ポカンと、口を開くばかりである。 結局、この国の秘密はわからなかった。 ただ わかったのは、無駄な時間を過ごしてしまったと言うことと、 またもや自分が邑輝にいいようにや られてしまったということだった。 しかも、いくら暗いといっても、またもや屋外で。 でも・・・手袋と懐中時計が戻ってきたんだし・・・ 一生懸命、自分に言い訳する。 「ちくしょう・・・ 行くぞー!!こうなったら、どこまでも行ってやる〜〜!!!」 密は叫んで、門番の近衛課長のところまで走った。 『資格が〜』と言っていた邑輝の言葉が気になったが、 それを振り切るように密は、 「課長。この壁の門、あけてください!!!」 と叫んだ。 |
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| 010910(月) |