| <第4話/エプロンと公爵博士の可愛い赤ん坊(3)> |
| 部屋に戻ると、亘理はまたもや泣き出した赤ん坊を 「高いたかーーい」とあやしていた。 その姿がなんだかほほえましくて、おもわず微笑んでしまう。 「着替えてきました。今から作りますね。」 「あ。坊。これも出してきといたで。 汚れたら困るやろ?」 アイロンをかけたようにしわ一つ無い赤いエプロンが渡された。 お腹のあたりに白黒チェックのラインテープで縁取られた大きめポケットの ついているエプロンで、男がつけてもあまり違和感はないデザインだった。 「ありがとうございます。」 心遣いに嬉しく思いながら、キッチンに立つ。 なんか、さっきスープ見たせいでスープ食べたくなってきた。 あとは・・・パスタとサラダくらいでいいか。 赤ん坊が大声で泣いている。 よく泣く赤ちゃんだなー。 あれだけ泣いてて疲れないのかな? 野菜を切る手をとめて、そっと後ろを振り返ると すぐに亘理と視線があった。 なんだか妙に恥ずかしくなって、すぐに視線を野菜にもどす。 びっくりしたー・・・ って、何、俺こんなに動揺してんだろ・・・ 鍋で湯を沸かし、野菜を切る。 とんとんとんと、リズミカルに包丁が野菜を切る音。 後ろでは、亘理が赤ん坊をあやしている。 なんだか、こうしてると俺たちって・・・ 「家族みたいやな」 ふいに、考えの続きを亘理に口にだされ、 密は心臓が飛び出そうなほど驚いてしまった。 「料理を作るお母さんと、赤ん坊をあやすお父さん。 って、ベタすぎるか。」 亘理はそう言って大声で笑った。 そ、そうだよな。 こういうのって、笑い飛ばせる考えだよな。 ははっと、苦笑しながら野菜を沸騰した湯に放りこみ、 隣の鍋にパスタを入れ込んだ。 赤ん坊の泣き声以外、沈黙のまま時が過ぎる。 パスタのゆでかげんを見ていると、ふいに亘理が 「おー。なんやお前ーー。おしっこかーー??」 と言って、亘理は赤ん坊をかかげた。 衣服は濡れていないので、おもらしをしたわけではなさそうだ。 「悪い、坊。 ちょお、こいつのおむつ変えてくるわ。」 「あ、はい。」 ぱたんと、扉が閉まる。 はー。何、緊張してんだろ俺。 考えをかき消すように鍋の中の―プをかきまぜ、お玉で少しすくいとって 口に運んだ。 ん。けっこういける。 でも、あとちょっと塩と胡椒がきいてたほうが良いかな・・・ 戸棚を探すと、新品の胡椒がでてきた。 ふたを開け、パッパっとスープに胡椒をかけたその時だった。 ビービ―と、警告音が鳴り響いたかと思うと 「コショー コショー」 と、静止していたはずのロボットが起き上がったのだ。 な、なんで?!止まってたはずじゃ・・・?? それに、ちょっとしか胡椒使ってないのにっっ 「コショ―コショー」 考える暇も無く、ロボットは叫びながら手当たりしだい身近にあった 皿などを投げつけだした。 「うわっっ」 上手くかわしているつもりだが、よけきれず何枚か皿に当たってしまう。 「っつ・・・」 膝の少し上の内側に切り裂く痛みが走った。 血がにじんでいる。 「どうしたんや?!」 バターンと扉が乱雑に開けられ、亘理が入ってきた。 「亘理さ・・・」 「??!また動き出したんか・・・」 そう言うと、亘理は素早い動作でロボットの後ろに回り、 ロボットの両耳に電極プラグをつっこみ、ショートさせてしまった。 「やっぱ、わいにロボット作りは無謀やったか」 「すみません・・・」 「なんやなんや。坊があやまること違うやろ」 あやすような顔でのぞきこまれる。 「でも・・・」 「坊のせいやないやんか。わいの腕が悪いんや。 それに、さっきの薬は効いたんやろ?」 「はい、とっても!!」 速答すると、亘理は嬉しそうに眼鏡の中の目を細めた。 「ふふふ。坊は良い子やな。」 そう言うと、亘理は、ぽんぽんと密の頭をたたいた。 相手が都筑なら くってかかる動作だけれど、不思議な事に相手が亘理だと 素直に受け取ってしまう。 なんでだろ・・・ そう思っていると 「あ。ここ、怪我しとるやないか・・・」 と亘理はしゃがみこんで足の傷を指差し密を見上げた。 「えっと、その・・・たぶん、破片か何かで切ったんだと・・・」 「・・・そぉか。破片が入っとたらやっかいやな。 吸い出すで?」 「え?あ、 良いですっっ」 密の言葉を聞かず、亘理は傷口に口唇をよせた。 ぢゅっと強く吸われ、痛みと吸われる快感のせいでおもわず 「 あっ 」 と、声がもれてしまった。 あわてて口をおさえるが、かぁぁっと赤く染まってしまった顔は隠せない。 下唇をかんで吸引に耐えていると、ふいに亘理の舌が移動し始めた。 舌の熱さと湿りが、内太もものやわらかで敏感なところを なぶるように這い上がってくる。 亘理の頭がエプロンにうまった。 「あっ 、ちょ・・・! そこはべつにっっっ」 亘理は短パンの裾を鼻で持ち上げると足の付け根のすぐそばに 吸いついた。 「っあっ ・・・!」 その刺激に少しずつ主張し始めてきた敏感なものに亘理の手が触れる。 「わ たり ・・・さんっっ」 まだ半分以上残っている理想で名を呼ぶと、エプロンに埋もれていた 亘理の顔が目の前まで持ち上がってきた。 「・・・坊。」 「亘・・・理さん・・・?」 愛おしむような瞳でまっすぐにみつめられ、視線と声がふるえてしまう。 耐えられず、小さく首を横にむけてまばたきをしていると、 くっっと腰をひきよせられられ、指で軽くあごをつかまれ 顔を亘理のほうへとただされた。 しかし、視線は泳がせたままだ。 「わ、亘理さん。 あの・・・・」 「ん?」 「亘理さん・・・奥さん、いるんじゃ・・・」 そう。これが、ずっと気になってた。 赤ん坊がいるってことは、奥さんがいるってことだし・・・ 「奥さん??なんのことや???」 「え・・・だって、さっきの・・・」 言葉を切ると、亘理は密の腰を強くだいたまま、 「う〜ん」と考え込むように軽く首を上へ持ち上げた。 「・・・もしかして、ゼロのことか??」 「え? ・・・さっき、亘理さんが抱いてた赤ちゃんって・・・」 「あー。あれはゼロや。」 「で、でも。 なんで赤ちゃんのおくるみを?」 「あいつ今、羽を怪我しててな。 動けんでかわいそうやから、ああやって あやしてたんや。 で、そのまま抱っこしたら痛いやろ? おくるみやったらちょどサイズもええからな・・・」 「で、でも泣き声が!!!」 「あー・・・あれは、恥ずかしい話やけど、 作り置きのケガ薬を飲ませたんが悪かったみたいでな・・・」 ははっと亘理が苦笑する。 なんだ・・・ゼロだったんだ・・・ 密も下をむいて軽く苦笑していると、ふいに亘理に呼ばれた。 軽くあごを持ち上げて、亘理をみつめる。 「坊?」 「は、はい・・・」 返事をすると、ちゅっと軽くついばむような口付けをされた。 かぁーっと、さらに赤くなると、亘理は 「むっちゃ、可愛い」 と、感激した様子でもう一度口唇をついばんだ。 |