present for you...
| 「い、いいって邑輝! こんな高い服、もらえねぇよ!!!」 「何を言ってるんですか。 今日はあなたの誕生日でしょう?」 とある有名ブランドの店内。 くすくすと笑う 眼鏡をかけた銀髪の美形と、 金色に光る さらさら猫っ毛の美しい少年が押し問答をしている。 「あのぉ〜。お客様、どうしましょうかぁ〜。」 若い店員は、頬をそめながら自分の中で一番甘ったるい声をだして その、色々な意味でとびっきり上客な二人を交互にみつめた。 「買います。」 しかし、そんな店員に目もくれず、少年―密だけを見つめ 銀髪の美形―邑輝はそう告げた。 時間と場所は変わって、ここは超一流ホテルのレストラン。 まわりを見渡すと、上品そうな紳士・淑女な方々が 各々 席について食事をしている。 密は高級品ではないが、一応 白いYシャツにネクタイをしめた服装だったので さほど浮くことは無かったが、それでも場違いだと思いは ぬぐいきれない。 (気取りやがって。) 密はそう思いながら、密のわからない料理とワインを次々に注文する 邑輝を横目でちらりと見た。 その瞬間 目が合い、不適な笑みを返される。 …少しの間、みとれてしまった。 あまりにも綺麗で完璧な顔に、すいこまれそうになったのだ。 (ち、ちくしょう!ひとのこと拉致りやがって!!) 関係無いことを考えて、密はそんな自分をごまかそうとした。 しかし、拉致られたというのは嘘ではない。 今日は 本当だったら都筑のたてた企画で、召還課のみんなに 誕生日を祝ってもらうはずだったのだ。 それなのに、密がみんなからちょっと離れた瞬間に、 まるでマジックのように現れた邑輝に、そのまま 連れさらわれてしまったのである。 邑輝は密にとって、絶対的に受け付けず、許せない相手だった。 なのに、なぜか 今こうして一緒に買い物をして (しかも、密のプレゼントまで購入) 食事までとろうとしている。 邑輝の行動の意図も、大人しくついてきている自分自身の行動も、 よくわからなかった。 そうこうしているうちに、次々と料理は運ばれてくる。 ある程度ならマナーを知っているが、それでも心もとないので 邑輝の食べ方を真似したりしてみる。 しかし、そんなことを悟られては癪なので、ごく自然に密はそれをした。 が、邑輝にはお見通しだったようで 「そんなにかたくならずに。 美味しく食べることが、食事についての最大のマナーなのですから。」 と言って笑われた。 そんな邑輝の表情に、密は圧倒されっぱなしだった。 いつもなら憎らしくてたまらない邑輝の冷ややかな笑みは、 なぜか今日はとびきり極上なものに変わって自分に向けられている。 そうだ。この笑顔のせいで、自分はいつもだったら近寄るのも 嫌な邑輝と、一緒の時間を共用しているのかもしれない。 なんせ、こんな優しげな笑顔は見たことなく、 そして初めてというのが正しいようなその表情は、 なんだかとてつもなく密の胸を熱くしてしまっていた。 (これだったら…邑輝のこと、嫌 じゃ、ないかも…) そんな考えが頭をよぎった。 しかし、 「う、うるせぇ。」 何度目かわからない自分へのごまかしをして、 密は硝子ごしに うつる摩天楼ばりの夜景を見た。 そう。ここはこのレストラン内で、とびきり良い席なのだ。 それも、数ヶ月も前から予約しておかないと手に入らないと言う。 「おやおや。 よほどボウヤはわたしのことが嫌いなようですね。」 ため息のような声で邑輝はつぶやいた。 それに対して 密は反抗する。 「ボウヤって言うな! 俺はもう…っっ」 「今日で21歳。ですか。」 邑輝は、そう言うとくぃっとワインを口に含んだ。 ワイングラスがゆれたせいか、あたりに芳醇な匂いが漂う。 「え?あ…うん。」 密はとまどう。 16歳で死んで 体の成長が止まって以来、自分でも忘れてしまいそうに なるくらい、年齢のカウントをしなくなっていた。 してしまったら、よけいに惨めな気になりそうだったから。 とまどいをふっきるように、今度はしっかりと邑輝を見つめて密は言った。 「とにかく、俺は本当なら もう充分成人なんだ。 だから、ボウヤって言うのはやめろ。」 キっと、睨みつけるように邑輝の目を見る。 ともすれば、その目の引力に引き込まれそうだったが 密はそれに耐えようとした。 しかし、真正面から直に返ってくる邑輝の目は やはり蟲惑的で、 密はおもわず手にとったワインを一気に飲み干してしまう。 つーんと、濃いぶどうの匂いのアルコールが、鼻の奥を刺激した。 その後も、食事は続けられた。 しかし、そのうちにワインに酔ったのか何に酔ったのか、 密は ほろ酔い気分とともに、体に熱をもってきてしまった。 そんな密を見て、ふふっと小さく笑うと 「では、今からは大人の扱いをしてあげましょうか。」 と言って、邑輝は席を立った。 たったワイン一杯なのに、酒に免疫の無い密にはキツイものがあったのか、 寄りかかりたくなど無いのに、そうしなければまともに歩けず 密は 邑輝に介抱されながら歩いている。 どうやら、今歩いているのは ホテルの廊下のようだ。 今、エレベーターに乗った。 (そう言えば、さっき邑輝は何って言ってたっけ。) レストランでの会話の、最後のほうがあやふやだ。 (たしか、大人の扱いがどうのって…) 考えて邑輝を見上げた瞬間、その顔は吐息がかかるほど近くにあった。 「え?!」 左手は腰にまわされていて、気が付けば右手は密の顎に置かれている。 「む、邑輝??!」 「し。 キスのときは、おしゃべりをしないのがマナーですよ。」 そう言うと、邑輝は密の口唇に自分のそれを重ねた。 「んぅっ」 先ほど飲んだワインの味が、邑輝の舌とともに侵入してくる。 逃げようとする舌は絡まされ、邑輝の口腔に導かれた。 そしてそのまま吸い上げられて甘噛みされる。 唾液の交換に、くちゅくちゅとなる音がエレベーター内に響いた。 それが、とてつもなくいやらしく感じられて、ぞくりとした感覚が背中をはしり、 たかがキスだけなのに腰に力が入らなくなってしまった。 「さあ。着きましたよ。」 なんとなく想像はしていたが、やはりそこは、最上階のスウィートルームだった。 ここは本当に日本か?!と言いたくなるような洒落たアンティークが そこかしこに置いてあり、ベッドなんて天蓋つきだ。 さっきのキスだけで、クラクラ倒れそうになっている密を、 邑輝はその天蓋つきベッドの上に積み重ねた枕に 背をもたれさせるような格好で座らせた。 「ふふ。そうしていると、本当にお人形みたいですね。」 「う…うるさい…」 酒のせいかキスのせいか、とにかくちっとも整わない呼吸の乱れに あえぎながら、それでも密は はっきりそう言い返した。 「可愛くありませんね。」 「可愛い なん て…思わ れた…く も ねぇよ」 密の言葉に少しの苦笑をもらすと、邑輝は ぎしりと音を立てて ベッドの上にのっかかった。 ジャケットは、もうすでに脱いでいる。 「な…に、する気 だ…」 邑輝の視線から逃げるように 密は手の甲で顔を隠す。 「何って。大人の扱いですよ。 21歳のあなたに。年齢相応のことをしてさしあげます。」 そう言うと、邑輝は顔を覆う密の手をにぎり、顔から離させると 口唇を近づけた。 「っやっっ」 とっさに、握られていない逆の手で邑輝の口唇を制した。 「嫌だ。お前とは…やらない。」 しかし、そう言って拒み 自分の顔を制する密の手を、 邑輝は、ひちゃっと音を立てて舐め上げた。 「うぁっ」 それだけで、ビクンと体がとびはねる。 「ワインのせいか、いつも以上に敏感になっているみたいですね。 …もっと敏感にしてさしあげますよ。 ちょっと触れただけで、自分から欲しがってしまうくらいに。」 「な?!」 片方の手に密の両手首をおさめながら そう言うと、邑輝はベッドテーブルにかざってある 深紅のバラに手を伸ばし、その中から最も鮮やかな 一本を抜き取った。 そして そのまま、密の鼻の前まで持ってこられる。 「さぁ。」 「んんっ」 いっそ強烈なまでの むせかえるバラの匂いが、密の鼻腔内をいっぱいにする。 甘やかすぎるそれは、脳の芯までとろかしてしまいそうだった。 よけいに 息が上手くできずにあえぐと、邑輝はそのバラをおもむろに振り上げた。 「っっ??!」 びりぃっと、密のシャツが破ける。 鞭のようにしなって振り下ろされたバラが、その刺で布地を引き裂いたのだ。 そして、それは何度も行われる。 「うっっ や、やめっっ」 言っても、邑輝はやめない。 抵抗したいが、バラの匂いで脳どころか体までしびれてしまったのか、 動けない。 どんどんエスカレートしていくそれは、シャツがぼろぼろになって、 ただ体にまとわりつく布地と化してから、ようやく邑輝はその行為をやめた。 「っつ…」 密は顔をしかめる。 どうやら、バラの刺が体までをも傷つけてしまったらしい。 右の首筋から左の胸まで、バラと同じような深紅の色をした 線がひかれていた。血液がにじみ、布地と化したシャツをうっすらと染める。 「ああ いけない。私としたことが。 ついつい興奮して、やりすぎたようですね。」 ぱさりと前髪をかきあげ、しかし悪びれない様子で邑輝はそう言った。 (この、変態っっ) 言ってやりたいが、舌がもつれて言えない。 「舐めてさしあげますよ。」 そう言うと邑輝は 密の胸に手を置いて、首筋に口唇を近づけた。 「ぅうっ く っっ」 じりっと、痛みが走る。 傷口に舌を這わされ、血液を上からなぞられる。 ほぼ、密の弱いところとかさなっている傷口を舐められると言うことは その弱いところも舐められていると言う事で。 痛いはずなのに、甘い痺れもおびてくる。 それを知っているように邑輝は、わざと密の情欲をあおるように ひちゃひちゃと音を立てて舐め上げ、ときには傷口を少しずらして 首筋や胸に、きゅぅっと吸い付いた。 「あっ」 そのたびにあがる、痛みからとも、快感からともとれる、鼻にかかった吐息。 邑輝は、悪戯をしかけるような笑みを向けて、密の乳首に吸い付いた。 薄皮一枚の傷は、もう血をにじませてはいないが、まるでボディーアートのように 密の白磁の肌に 朱をそえている。 「あっ んんぅ っっ」 舌先でころがすように、胸の突起を愛撫する。 やんわりと噛み付いてやると、面白いように密の体はビクビクと反応を返した。 「ふふ。気持ち良いんですか?」 「うっるさ ぁ い …!!」 指先でくりくりと押しつぶしながら聞く問いに、密は頬を上気させながら答える。 「まったく、素直じゃありませんね。 ここはこんなに素直なのに。」 邑輝が密のうちももを、黒いコットン素材のズボンの上から這うように なであげ、もっとも敏感なものがあるところまで 辿り着かせた。 そこはもうすでに、ズボンを押し上げて解放されることを待っているように見える。 ジーっとジッパーを下げて、邑輝はそれを 下着越しに外気にさらした。 「ほら。」 邑輝の指が、形を強調させるように布ごしにそれをなぞる。 それだけの刺激なのに、過剰なまでに密の体はビクっとふるえた。 さっきから、バラの匂いがいやに鼻につく。 脳神経にまでたどりつきそうなそれは、やはり 密の思考にまで甘い芳香とともに痺れのもやを かからせていた。 布ごしの愛撫を邑輝は続ける。 もどかしい刺激に、もっと直接的に触れて欲しくて揺れそうになる腰を、 密は下唇を噛むことで我慢した。 しかし、揺れそうになる腰は抑さえられても、 欲望に忠実な部分は言うことを聞かない。 邑輝は薄く笑うと、下着が先走りで濡れはじめたことを密に告げた。 「口と違って正直ですね。」 「っっ!!!」 説得力は皆無の状態だったが、密は邑輝をにらんだ。 そうしないと、いつものように馬鹿にした口調で嘲け笑われると思ったからだ。 しかし、邑輝の言葉は違った。 「まぁ、それでもしかたないでしょう。」 「?!」 逆に慰めるような表情で微笑み、邑輝は続ける。 「このバラですが、実は香りに催淫効果がありましてね。」 今度は変わって、ニヤリと妖艶な笑みを浮かべた。 「そんなものどこでっ…」 「入手経路は秘密ですよ。」 舌足らずに聞こうとした密の唇に人指し指をあて『ないしょ』のポーズを作ると、 そのまま他の指ごと密の口腔内に侵入させた。 「は ぁ っ かっっ」 指を、フェラチオさせるように舌から口唇まで唾液をからめながら往復させる。 そうすると、密は苦しいと言うよりは切なそうな甘い吐息のあえぎをこぼした。 そんな、羞恥も理性もとんでしまった様子の表情を楽しみながら、 邑輝は巧みに密のズボンを下着ごと脱がした。 もうすでに先走りのミルクがだらだらとだらしなくペニスを伝っている。 邑輝は、それをすくいとるように下からなぞり、 手のひらできゅっっと包みこんだ。 「あっくっっ」 ゆるゆると邑輝の指が上下運動をはじめ、ほんの数十秒、 いや、十数秒かもしれない。 とにかく、邑輝の指がピンク色のそこを数回しごいただけで、 密はあっけなく達してしまったのだった。 「早いですね。」 手に吐き出されたそれを、邑輝はペロっと舐めとる。 「っっ…」 そのせいで少し戻った羞恥に 一気に顔が紅潮した密の耳に、 邑輝は口唇をよせた。 「恥ずかしがることは ありませんよ。 もっと乱れてごらんなさい。」 その言葉は、邑輝にしかだせない特有の艶を帯びていて、 密は一瞬、その言葉に従わざるを得ない気分になりかけた。 (これは…匂いのせいだっ 邑輝にこんなこと感じるだなんて信じたくない…) プライドと、誘惑に負けそうな心。 心の中で葛藤をしている密の膝に、邑輝は手をかけると そのまま左右に開いた。 「っな?!」 「驚かなくても、わかっているでしょう?」 密の心情が落ち着くのを待っていることなどできないと 言わんばかりに邑輝の指は密の中へともぐっていく。 「んっ ぅ っっ」 密が垂れ流した精液が潤滑油の役目をはたしている。 そこは、今までじらされていことが寂しかったとでも言うように 邑輝の指を貪欲にずぶずぶと飲み込んでいった。 「ふふ。このままでは、また すぐにでも イってしまいそうですね。」 すっかり収めきった指をぐりっと掻きまわしながら邑輝は言う。 医師らしく、すぐさま密の前立腺をみつけだした邑輝は、 執拗にそこばかりを攻めた。 「っそこ、 やめ っろぉっっ」 「やめても良いですが、この状態でツライのはあなたでしょう?」 「ふ うぅ っ」 確かにその通りだった。 もうすでに中は、指だけの細い刺激では もの足りなくなっている。 「さあ。どうしますか?」 「あっ あ ぅう っっ」 カギ状にした指を出し入れして、密の欲望を煽る。 もう、密には選択肢など無かった。 「い、 れて …ぇ 」 密が言うと、邑輝は了解の意を口付けで示した。 しかし、すぐにはご褒美は与えてやらない。 「すぐに イかれては、つまりませんから。」 そう言うと、邑輝は先程 密の衣服を破る為に使ったバラを手にもち、 素早い手つきで、それの刺を全て取ってしまった。 「何、す…??!」 「こうするんですよ。」 密の問いかけにニッコリ笑うと、邑輝はバラのツタで きつく密のペニスを縛った。 「い、 たいっ 」 「そんなはずないでしょう? 刺は全てはずしましたし。」 「違っ」 刺が痛いのではない。 解放間近の欲望の源を拘束されているのが痛いのだ。 そんな密のペニスを意地悪く手で握り、密のノドがしなるのを 目を細めて見ながら、邑輝は己の欲望の塊を一気に密に突き刺した。 「っひうっっ」 乱暴な挿入なのに、待ち構えていたそこは 何の苦もなく迎え入れる。 「あっあっ んん ぁあっ」 内壁を擦られ 奥の奥から揺さぶられ、少しでも油断すると 意識ごと どこかに持っていかれそうだった。 見つけられているポイントばかり攻められ、しかし 自由にならない射精を、密は自らも腰を振ることで鎮めようとする。 だが、邑輝の突き上げは絶妙で、何度となく密は悲痛な、 それでいて甘やかな悲鳴をもらしていた。 「こ んな のっ っ」 あえぎなのか声なのか、密の言葉はわかりづらくなっている。 「なんですか?」 それほどまでにしている当の本人 邑輝は、腰の動きは止めずに いつもどおりの余裕な表情で、そう問った。 「こんなの、俺じゃな っい 。 んぅ っ バ …ラの、 せ だか、らぁ 」 「そうですね。」 「んんんっっ あぁっぅ !!」 「…そういうことにしておきなさ いっ」 密の、涙混じりの声にそう返すと、邑輝はいっそう 腰の動きを強めた。 「ひゃ ああっっ ん っ」 擦れるたびに滴る体液が じゅぷじゅぷと音をたてる。 ペニスに くいこむバラのツルが もどかしい。 花びらが微妙にペニスをこすって、新しい 快楽を煽った。 「むら きぃ!!これ解いて ぇっっ」 おねだりするように 邑輝の胸元で握りこぶしを握る。 「キスが上手にできたら、ご褒美に解いてあげますよ。」 そう言うと、邑輝は軽く口唇をつきだした。 「っん んぅ っっ」 それに むしゃぶりつくように口唇を重ねる。 痺れきった舌では邑輝を満足させることなんてできるはずなど ないのだが、別に、もとから本気で密のキスのテクニックを 求めていたわけではなかったので、邑輝は口唇を離すと 「上手でしたよ。」 と言って、唾液が零れた密の下唇を指でぬぐった。 「では、約束どう り…っっ」 そう言うと邑輝は、最後といわんばかりに大きくえぐって 密のペニスに巻いてあるバラの戒めを解いた。 「あ ――――――――― っっっっ !!」 つまったような あえぎで放出し、その達する瞬間の締め付けで 邑輝も達したのを最奥で感じながら、密はゆっくりと意識を手放した。
「…か。 ひそか ったら!!」 「ん…んん…」 誰かに名前を呼ばれているのを感じて、密は目をあける。 「つ…づき ?!」 視界に入った顔をみた瞬間、密はがばっと上半身を起こした。 まわりを見渡してみると、そこは図書室だった。 (そうだ。そういえば、誕生会を開いてもらう前に借りてた本を 返そうと思って…) 図書室に来たのであった。 そして、ここで邑輝にさらわれたはずだったのに。 (なんでだ?!) 頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。 (夢…だった、とか?) 密は困惑していた。 しかし、夢だったとしたら、あの邑輝の数々の奇行もうなづける。 だけれども、夢にしてはあの感触類々は生々しく 強烈にリアルだった。 (もー…わけわかんねぇ) 考えれば考えるほど、わからなくなってくる。 そんな密に気がつかない都筑は、 なぜか犬のようにフンフンと鼻をならして密の匂いを嗅ぎだした。 「あれ?なんか、密から甘い匂いがする…」 「え?!」 瞬間、密は自分の体を匂っていた。 確かに、嗅覚がならされて薄まってはいるがあのバラの匂いがする。 「なん で…??!」 「あれ?」 都筑があるものに気づいた。 「何これ??」 密の足元にある、紙袋。 その紙袋には、夢(?)で邑輝と一緒に行った店の名前のロゴが プリントされている。 「あー。密ったら、これを買いに行くために 俺達との約束、ほっぽったの?!」 軽く怒ったような都筑の口ぶり。 密はそれを聞いて、密の手首にはめられている時計を見やった。 22:26。 図書室に来たのは 早めに切り上げた仕事が終わってすぐだったから たしか、4時を少しまわった頃くらいだったのだ。 その後の、空白の約6時間。 密は着ているYシャツの首元からそっと手をさしこんでみた。 かすかに触れる、とても細い線のような かさぶた。 それは、たぶん 胸のほうまで続いているだろう。 よく見てみると、着ている服も、似てはいるが 元着ていた服とは 違っていた。 (やっぱり俺は…) ぎゅうっと、密は目をつぶろうとした。 が、 「かなり遅くなっちゃったけど、みんな勝手に飲んで もりあがってるから、メインの密君も早く行ってあげなきゃ!」 と言う都筑に腕をひかれたため、できなくなった。 「ケーキは食べずに置いてあるからね☆ もちろん、蝋燭もまだつけてませんっ」 そう言うと都筑は、椅子にすわっているのもおかまいなしに 密をひっぱった。 「お、おい ちょっと待て って !」 くずれるバランスに、立てかけるように置いてあった紙袋が倒れる。 中からこぼれ落ちたのは、包装紙にくるまれた服であろうプレゼントと、 赤い一輪の、バラ。 「うわーキレーvvv あ。なんか、密の体から匂ってきたのと同じ匂いがする。」 「あ!!ちょ、それはっっ」 拾い上げてすぐに鼻先へ持っていった その催淫効果のあるバラを、 密はあわてて取り返そうとした。 こんなところで さかられたら、たまったもんじゃない。 しかし、 「ん〜。甘くていい匂い。」 と 言う都筑の顔は、いつもどうりの おマヌケなままだった。 「…え?」 「ほら。早く早く。」 右手に密を。左手に紙袋とバラを持った都筑は そのまま図書室を出て行こうとする。 「ちょっと待っ」 「待てません!俺達は、もう充分待ったの!」 「違う!そうじゃなくってっっ」 (このバラ、催淫効果があるんじゃなかったのかーー??!) だとしたら、あんなに乱れまくったのはバラのせいじゃなくて…??! っていうか、夢じゃないのに あんなに優しかった邑輝って…????!!! もしかして、俺をからかうためとか? でも、それなら あんなに金も時間も手間もかけるような真似、 しないよな???!!!! どういうことだよ?!わけ わかんねぇよっ!!誰か教えろよっっ! 一体 ほんとに… 「なんなんだよーーーーーーーーーっっ」 収集つかない疑問符達に密が叫ぶと、 都筑が持った紙袋から、ひらりと一枚のメッセージカードが 舞い落ちた。 密はそれに気づいたが、しかし、どんどんと目的地へと進む都筑は止まらない。 記されていた、『HAPPY BIRTHDAY DEAR…』の文字。 動体視力の良い密だが、その先の言葉を読み取ることはできなかった。 まあ、そんなことはどうでも良かったからというのでもあったのだが。 しかし、それを読めば密の中にうずまく疑問符達を 一気に抹消することができたのだったのだ。 兎にも角にも、波乱巻き起こる密の誕生日は、 頭を悩ませ続ける 密をそのままに、 最終的に 仲間達のどんちゃん騒ぎによって幕を閉じたのである。 HAPPY BIRTHDAY DEAR ××× HISOKA ☆ |
2001年の密の誕生日に書いた話。
これにアラタがイラストをつけた☆
0021216